三笠書房:『孫子の兵法』 解説:守屋洋
今回私が読んだ本はコチラ!
三笠書房初、守屋洋という方が編纂された、「孫子の兵法」です!
この手の兵法書は読みにくいのが基本なのですが……この本はどちらかというと兵法書初心者向け。
兵法書を触ったことのない方、あるいは中国古書独特の質疑応答方式が苦手な方なんかにおすすめの、わかりやすさに重点を置いた一冊です。
孫子兵法と言えば、もう知る人ぞ知る、超有名な兵法書ですよね。おそらく、読んだことがなくても名前だけは知っている……という人も多いのではないかと思われます。
そんなネームバリューも手伝って、呉子、六韜、三略、司馬法etc……とにかく他の雑多な兵法書よりは抵抗なく読めるのが、孫子のいいところですよね。
※内容の要約は別記事に逐次追加していきます
孫子の魅力:現代社会にも応用できる教え
孫子の最も良いところは、「そのほとんどは抽象的な教えであり、考え方次第では軍事以外にも応用できる部分も結構ある」という点に尽きます。
例えば、孫子の有名な言葉、「戦わずして勝つ」。
これはつまり、「直接対決の前に、謀略や外交など、打てるだけ手を打って、戦う以前に決着がつくのが一番いいよね」という意味なのですが……
これを現代に置き換えるならば、「無暗に人と争うのではなく、仲良くできそうな人とは争わずに仲良くしたほうがいい」という感じでしょうか。
あるいは、今回挙げさせていただいた「孫子の兵法」では、企画力で勝負するという文章を用いていますね。
要するに近隣のライバルとしのぎを削っている店に例えると……
単純な値下げ競争ではお互い利益は薄くなっていき、片方が音を上げるころには店は赤字、従業員の給料も減る一方できちんと支払えないという事態になる。
そこで、他に顧客を喜ばせるサービスや、あるいは仕入れルートを変更してみることで値下げの必要や無理な価格変更の必要がなくなる
と、こんな感じになるのでしょうか。
他にも、「勝ちやすきに勝つ」、ようは(前準備なんかをきっちりして)必ず勝てる戦いにだけ臨むのを大事なこととして取り上げたり、「戦うだけがすべてではない」というような表現を各所に用いたり……
とにかく、その場の奇策ばかりに頼らず、まずは誰でも勝てる状況を作れる努力をすることが大事であるというようなことを、孫子は伝えたいわけですね。
『孫子の兵法』のよい点
さて、孫子兵法の利点について色々と述べたところで……今度は今回の発表作である『孫子の兵法』を読んだ上での感想ですね。
この本を読んで何よりまず感じたことは、「わかりやすく編纂されている」という点に尽きます。
本書は現代の価値観に合わせて、とにかく初心者にも読みやすいようにしっかりと、わかりやすく書かれています。
原文の和訳を中心に難解な部分をなくしながら……おそらく、このブログをスイスイ読める人にとって理解ができない内容もすんなり入ってくるため、非常に読みやすいです。
また、応用法や難しい単語の解説などもついているため、小難しい本特有の意味不明な単語についても心配なし。
さらには実際の歴史において発生した戦いや軍師、武将らの策を持ち出してわかりやすい使用例や応用例を使っての解説になっているので、腑に落ちない部分がとにかく少ないのが魅力ですね。
孫子兵法に興味があるけど難しそうだから避けていた……そんな方にはおすすめの一冊でしょう。
気になる点
個人的には気になる点もいくらかありました。それは
・歴ヲタ的に見過ごせない点がある
・あくまで入門用
と、この2点。
まず歴ヲタ的にちょっと引っかかった部分は、最近覆されているような通説を、あたかも真実であると言わんばかりに書いているという点。
わかりやすさ的には間違いない選抜だと思いますが……やはり間違いの可能性が高いとされる通説を当たり前のように持ち出されるのは、「うーん……む?」といった感じで、背中がむずがゆくなったり……
特に引っかかった点は、
1.中国上げ、日本下げの左翼的思考を各所でダダ洩れさせている
2.一部武将の無能化
といったところ。
1に関しては、「人情味があり聡明な中国人」と「無能で冷酷無情な日本人」といったような対比が、複数の場面で使われています。
当然、孫子の内容を照らす上ではわかりやすい対比ではありますが、歴史家の間で物議を醸しだしている「日本兵による中国人への横暴」に関しても中国側の主張を是として書かれていたり、そもそも中国賛美、日本卑下の一貫したスタイルは、日本人としての琴線にちょーっと引っかかってしまうかも。
特に最近のピリピリした外交状況を見ると、
それに即発された奴らの琴線に触れかねんからな。
というか、兵法書の簡易解説本で国際関連の印象操作まで突っ込んじゃったら、どーしても荒れるのは見え透いてるもんだが……
さて、続いて一部部将の無能化。
例えば今川義元とか、袁紹とか……。とにかくわかりやすさを重視してか印象操作を狙ってか、徹底して通説を重視している部分があるのが本書の気になる点。
よって、実際は再評価が進んでいる人物も昔ながらの通説通り無能であるかのように言われているのも、まあ気になると言えば気になるところです。
これもわかりやすさを重視する上では仕方のない部分なのでしょう。事実、通説の嘘話のほうが話が膨らみ、対比がしやすくわかりやすい部分も多いです。
いずれにせよ、「お前は何を言っているんだ?」という人にとってはどーでもいいようなこと。あくまで兵法書の和約として読むなら、特に気にすることではないでしょう。
さて、最後に……。
全体を通して読んでみたところ、やはり本書は、「あくまで孫子に触れ、そしてわかりやすく解説している」本に過ぎません。つまり、孫子初心者向け。
だいたいの意味が分かっていて、具体的な戦術論や応用法、戦略などなど……本格的に孫子を学びつくしたい人には不足の、ライト向けの軽い本であることは否めません。
というわけで、「孫子兵法を1から10まで知り尽くしてやるわい!」という人には、若干不足かも……
総じていえば、ライト用
要するに、こういう事ですね。
実際に「孫子ってどんなものなんだろう」「何が書いてあるんだろう」みたいな、興味本位での購入であれば、ほぼ間違いなく満足できる内容です。
簡単な解説本をとっかかりに、孫子をはじめ様々な兵法書を読んでいき、その隋を見出して自分なりに応用、上手く使っていく……
そんな野心の第一歩や、あるいは「単に知りたいだけ」とか、そういった考えがあるのなら、一つの選択肢にいいかもしれませんね。
っても、わざわざ国家情勢乱すような印象操作をぶっこむのは個人的にけしからん←
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