呉子:二章  『料敵』 後編

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呉子:二章  『料敵』 後編

 

 

 

情報分析、および勝てる敵勝てない敵の区分けは、前編に書かれている通りです。

 

 

後編では、敵情察知の方法、そして戦争の仕掛け時。この2項目を解説していきましょう。

 

 

 

 

……なんか呉子は戦争の話ばっかりやな。

 

 

 

まあ現代に応用できる部分も、その気になれば結構多いはず。現代風に置き換えたり、捉え方を変えれば、案外必要なさそうな部分も役に立つ……かもしれません。

 

 

 

 

 

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敵情察知の術

 

 

 

ここで述べられているのは、敵情視察の方法。というか、「こんな感じに浮足立った敵はこういう感じだから楽勝ですよ」みたいな感じの話ですね。

 

孫子にも長々と「敵がどうこう」とあったアレみたいな感じです。

 

 

これもまた割とピンポイントなアドバイスではありますが……「何気ないところに思わぬヒントがある」という一例としてご覧ください。

 

 

 

敵人之來 蕩蕩無慮 旌旗煩亂 人馬數顧 一可撃十 必使無措

 

諸侯未會 君臣未和 溝壘未成 禁令未施 
三軍洶洶 欲前不能 欲去不敢 以半撃倍 百戰不殆

 

 

敵人の来ること蕩蕩として慮無く、旌旗煩乱し、人馬しばしば顧みば、一、十を撃つべし。必ず措くこと無からしめん。

 

諸侯未だ会せず、君臣未だ和せず、溝塁未だ成らず、禁令未だ施さず、
三軍洶洶として、前まんと欲するも能わず、去らんと欲するも敢えてせざるは、半を以って倍を撃ち、百戦殆からず。

 

 

 

まず敵陣が迫ってきても落ち着きがなく、しかも旗印も乱れて人馬がおどおどしているという場合。これは方針が固まっていないという何よりの証拠となります。

 

この場合、統率はガタガタと見ていいですから、一の力で十の敵を撃破することも可能で、命令のしようもないため敵は手足も出せないでしょう。

 

 

また、どの国と連合もできず、君臣の仲も悪い。また陣地も完成せず法令も行き届かないといった軍。

 

これらはまだ来ない敵に恐れおののき、進退もままならない状態となります。これだと半数の兵で戦って勝つこともでき、何度戦っても負けることはありません。

 

 

 

要するに、組織や軍隊は統率と求心力がかなり重要なわけですね。本気でどうしようもない人のために力を尽くすのが馬鹿らしいと思えてしまうのは、すべての人が一緒です。

 

 

敵がそういう状況ならば、戦って勝つのも難しくないというわけです。

 

 

 

 

何気ない事がヒントになるってのは、実は結構よくある事だったり。

 

 

有名なのは「野生の鳥や動物が慌ただしく飛び立ったら、そこに伏兵がいる」みたいな話だが……

 

 

まあ、現代では人間心理との併用とかで、何気ない人の動きやさりげない口調、仕草が意外なところでヒントになることも結構あるぞ


 

 

 

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その危うきに趨く

 

 

 

 

料敵の章もいよいよ最後。その記念すべき(?)ラストには、孫子はじめ他の兵法でもおなじみの、「敵の弱点や備えのない不意を突くべし」といった旨の内容で〆られています。

 

 

まず大前提として、兵を用いる際の鉄則として以下の言葉を残しています。

 

 

 

用兵必須審敵虚實 而趨其危

 

兵を用うるには必ず須らく敵の虚実を審らかにして、その危うきに趨くべし。

 

 

 

つまり、敵の虚実(隙と実体、隙がある場所としっかり防備できている場所)を十分に観察したうえで、その弱点を攻めるのが理想であるとしているわけですね。

 

 

呉子はその後、攻撃可能な状態の実例として、以下の敵の様子を例えに出しています。

 

 

・遠方から到着したばかりで隊列が定まっていない時

 

・食後すぐで臨戦体制に移行していない時

 

・焦って移動したり疲労困憊している時

 

・長距離移動によって先鋒と後方が大きく離れて陣が乱れた時

 

・渡河していて全軍がまだ渡りきっていない時

 

・隘路や険しい道の通過中

 

・旗印が乱れていたり、やたらと陣変えをして落ち着かない時

 

・将兵の心が離れ離れになったり、恐怖に捉われている時

 

 

 

いずれも、敵が隙を晒して迎撃もままならないタイミングですね。戦闘態勢が整ていなければ打ち破るのは容易ですし、悪路走破と臨戦態勢は両立するのは至難の業。また、一丸となっていない敵から勢いは生まれにくく、迎撃にも苦難を擁するでしょう。

 

 

この辺りは、だいたい孫子にも似たようなことが書かれていますね。

 

 

 

なんだか卑怯な気もしますが……そもそも戦争はスポーツとは違い、汚くて元々のダーティな世界です。卑怯だろうが何だろうが、勝つことがすべてとされている世界なのですね。

 

 

当然、ある程度の御法度やルールはありますが……利害が絡んだ殺し合いである以上あっても無いようなものですし、破ったところで不利益になるケースも少ないのです。というか源義経も戦争のルールは複数回破ってる

 

 

まあ、国内が平穏なうちは法律やら何やらでなかなかそうもいきませんが……限られたルールの中でうまい事穴を見つけて、そこを攻略していくのは、必ずしも卑怯な事ではありません。

 

 

 

行き詰ったときは、一度現状の整理や周辺事情の観察をして、抜け出せる隙を探してみるのもいいかもしれませんね。

 

 

 

 

 

他人を意図して貶めるのは卑劣極まる醜悪な行為だが、ルールの範囲内で常識破りの行動を起こすという観点自体は悪い物じゃない。

 

ダメ元で、誰もが気付いていないルールの穴に向かって全力疾走してみるのもいいかもしれんな


 

 

 

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