三十六計:第十九計 釜底抽薪(ふていちゅうしん)

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三十六計:第十九計 釜底抽薪(ふていちゅうしん)

 

言葉の意味

 

 

釜底より薪を抽く。

 

 

熱くてとても触れないような釜を手に持って移動させるには、釜が冷めるのを待つしかありません。そんな時に、釜底で燃え盛っている燃料を取り除くことで火の手は止み、後は釜が冷めるのを待つだけとなるのです。

 

釜底抽薪の策とはここから転じて、根本をどうにかすればだいたいの問題は自然に消滅しますよという意味合いになります。

 

 

シンプルイズベスト。物事は大抵、案外単純なのです。

 

 

 

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要するに……

 

 

 

不敵其力 而消其勢 兌下乾上之象
其の力に敵さずして、其の勢いを消すは、兌下乾上象。

 

これまたちょっと占術的要素があって複雑怪奇な文になりますが……要するに、敵の力にかなわなくても、その勢いの出所を断てばどうにかなるかもしれません

 

「柔よく剛を制す」の言葉に通じるところがありますね。敵に直接正攻法で挑むのは剛、対して、柔は正面から立ち向かわず、敵の弱点や本質を突いていくのです。

 

 

 

釜を熱する薪の炎に、正面から対抗したところでどうにもなりません。息を吹きかけても焼け石に水、それどころか余計に燃え上がらせることもあります。

 

ならば、まだ燃えていない薪を撤去して、これ以上燃えることがないようにすればいい。火を消すには、まず火元から。新たな火種を取り除くことで火の勢いは自然に弱まります。

 

 

火だけでなく、何か問題が発生した時にも同じようなことが言えますね。例え問題がどれほど膨れ上がって手に負えなくなっても、その問題の発生源がどうとでも処理できるのなら、案外どうにかなったりするものです。

 

 

見せかけや表面の恐ろしさや複雑さに惑わされず、本質を見極めることが、何より大事なわけですね。

 

 

 

擒賊擒王とも近いところがあるな。

 

特に大きな問題に立ち向かう時は、正面から見える場所をどうにかするより根本を抑えることを考えたほうがいい。じゃなきゃ、どうやっても収集つかなくなるからな


 

 

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実例:豊臣秀吉とかいう攻城戦の鬼

 

 

 

これはまあ中国だけでなく全世界に言えることですが……本質や力の源を取り除くことで多少の無茶も押し通してしまうというのはよく見かける戦勝パターンです。

 

とりわけ日本では、決して高くない身分から天下人になった豊臣秀吉なんかは、釜底抽薪の策を使って難攻不落の城をうまく陥落に追い込んでいます。

 

 

三木城、鳥取城、備中高松城……多くの城を落としてきた秀吉の得意戦術が、敵の力の出所である食料を完全にシャットアウトしてしまうという戦法でした。

 

ある時は完全包囲して兵糧の輸送を食い止め、ある時は商人から米を買い占め、またある時は水攻めで援軍も兵糧輸送も無理という状態にして……残虐とすら語り継がれるこれらの兵糧攻めによって、秀吉は多くの城を落としたのですね。

 

 

残酷非情だとかえげつないとか評される戦法は、裏を返せばそれだけ相手の弱点を的確に突いていたという事。平時にこんなことをする奴はクズ以外の何物でもありませんが、戦争においてそれらも被害を抑える有効戦術。

 

このように相手の首根っこを確実に抑えて降伏まで追い込むのが、秀吉の快進撃のひとつの理由だったのです。

 

 


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