三十六計:第二十四計 仮道伐虢(かどうばっかく)

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三十六計:第二十四計 仮道伐虢(かどうばっかく)

 

 

言葉の意味

 

道を仮りて虢を伐つ

 

もうね、戦争、それも群雄割拠になると、それこそ外道な戦法が重宝されるようになるわけです。

 

この仮道伐虢も、もはや文句のつけようがないほどの外道戦法。ズバリ、敵の領地を通る許可をもらっておきながら、許可してくれた敵国に軍を進めて準備万端の状態で裏切る。これです。

 

 

要するに、敵でなく味方として接しとけば、付け入る隙もできやすいわけですね。

 

 

 

 

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語源・由来

 

 

 

この計略の元ネタは、『春秋左氏伝』なる歴史書に書かれた一幕。大国の晋(しん)は虞(ぐ)、虢(かく)という2つの小国と接しており、この2国をさっさと処理して併合してしまおうと考えた時に用いた策です。

 

晋の参謀である荀息(じゅんそく)という人は、虞と虢の双方を併合する策として虞の領内を通行するよう提案します。

 

「虞に財宝を贈って領内の通過を許可してもらいましょう。虞の君主は財宝に目がくらみ、かならず2つ返事で承諾してくれるはずです」

 

 

かくして晋はさっそく虞との交渉におもむき、通行許可を得ることに成功。すぐに虞の領内を通って虢を滅ぼし、その帰り道で虞を滅ぼすことに成功したのでした。

 

 

 

 

 

要するに……

 

 

両大之間 敵脅以従 我仮以勢 困 有言不信

 

両大の間、敵脅すに従を以てすれば、我は仮るに勢を以てす。困は、言有るも信ぜられず。

 

 

要は「庇を貸して母屋を取られる」というやつですね。これの母屋を奪う……恩を仇で返す側のやり口が、この仮道伐虢の策です。

 

 

上にある文章に書かれた例としては、例えば大国の間に哀れにもはさまれてしまった小国。大国のうち一方が小国に対していかにも武力で攻めようとしたときには、こちらは逆に「助けてやるぜ」とばかりに兵を動かすチャンスです。

 

当然、口だけでは相手の信用を勝ち取れないので、実際に動くことも重要。少なくとも最初のうちはきちんと戦うことで、いざという時のために信頼を勝ち取ってしまうのが作戦の工程で大事になるわけです。

 

 

逆に領地を守る側は、相手の救援を馬鹿正直に信じないこと。後述になりますが、これは現代でも言えることです。

 

 

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詐術にも応用できるよね!

 

 

 

以下、私が個人的にピンときたことを書き記します。

 

この仮道伐虢、要するに宗教や胡散臭いビジネスにおいて、苦しむ人をそのままカモにする手段に似ているのではなかろうかと思えます。

 

 

 

基本的に人は臆病な生き物。敵がいればそっちに目が行きますし、恐怖の対象がいればそれを取り除くことばかりに意識が向かいます。

 

そんな時、同じ敵や恐怖を見ている人がいて、しかも「あなたの味方だ」と強く主張し、実際に守るように動いてくれたら……ついつい、その人を信じてしまう。そんな人も多いのではないでしょうか。

 

 

窮地の中では一蓮托生、仲間と一緒に大きな問題に立ち向かう。仮道伐虢は、そんな心理を逆手にとって、運命共同体という名のカモにする策略ともいえるのではないでしょうか。

 

例えばいかにもいろいろ知ってそうだったり守ってくれそうな地位や権力を持っていたり、実際に敵と戦って追い払ってくれたり……。本気で困っている時にこんな行動を取ってくれる人がいたら、それだけで見る目にバイアスがかかってしまっても不思議ではありません。

 

窮地に陥った時こそ、人を騙そうという悪意を持った人物は接近を試みるものです。なぜなら、追い詰められている人を騙すのはかなり簡単ですからね。

 

 

そんな詐欺師や悪どい人間の詐術に引っかからないためにも、ピンチの時こそ信頼できるかどうかを慎重に見極めていきたいものですね。

 

 


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