三十六計:第十八計 擒賊擒王(きんぞくきんおう)

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三十六計:第十八計 擒賊擒王(きんぞくきんおう)

 

言葉の意味

 

 

賊を擒うるならば王を擒えよ

 

 

敵の大将を捕らえてしまえば、その敵は全員捕まったも同然。何事もそうですが、根幹や主要となっている部分さえどうにかできれば、後は敵であれ何かのトラブルであれどうにかなります。

 

 

擒賊擒王とは、敵を倒すには総大将を倒すのが手っ取り早いという意味であり、現代に転用すると「問題が困難な時は根幹を突き止めるべし」という意味合いにもつながります。

 

 

 

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語源

 

 

 

 

この言葉の語源は、あの唐の大詩人のひとりである杜甫(とほ)の作った詩の1節からきています。

 

 

射人先射馬 擒敵先擒王
人を射んとすれば先ず馬を射よ、敵を擒えんとすれば先ず王を擒えよ。

 

 

将が逃げないように逃げ足である馬を射れば、その将を捕らえるのが楽になります。敵の大将を先に叩けば、相手は統率を失います。

 

何事もそうですが、主力や主要となっているものを叩いてしまえば、あとは敵を瓦解させるのにそこまでの苦労はありません。

 

 

 

 

要するに……

 

 

 

摧其堅 奪其魁 以解其體 龍戰在野 其道窮也
其の堅きを摧き、其の魁を奪い、以って其の体を解く。龍、野に戦うは、其の道窮まる。

 

 

敵の堅固な守りを挫き、その首魁を奪って相手をバラバラにする。空より野に降りてしまった龍は、もはや手立てに窮してしまう。

 

局地戦での小さな勝利を積み重ねていくのは大事ですが、それだけですべてが決まるようなことはありません。やはり大勝負に出なければ堂々巡りになってしまいます。

 

 

完全に戦況が膠着している時は小さな勝利が後々に響くこともありますが……この擒賊擒王は、攻める時の戦いについて述べた策。互角の状況で手をこまねいているならともかく、相手を徹底的に叩くときに小さな利益を追っている暇はありません

 

時として大きく勝負に出て、一気に片を付ける。そちらの方が最終的に損害が少ないことも、世の中には多いのです。

 

 

 

 

小さい戦果に釣られて敵の大将を逃がせば、本拠地で軍を整えて再戦の繰り返しになる。

 

日々のトラブルでも元を断たなきゃ、表面上の問題を解決しても次から次へと新しいトラブルに見舞われるぞ


 

 

 

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現代への転用

 

 

 

おおよそ現代でこれを活かす方法は、思いつく限りでは2通りですね。

 

 

 

1.組織のトップに対してアクションをかける

 

2.何か問題が起きた時は、ひとまずの解決だけでなく根本の原因を探る

 

 

 

まず、トップに対する働きかけ。これはもうわかりやすいですね。取引先に何かの交渉を持ち掛ける時、取引先の現場監督に何かしらの交渉をしても意味はほとんどありません。

 

これは、おおよそ実生活でも同じことが言えます。ちょっと変則的な考え方ですが……例えば学校や職場内のいじめについて。こういういじめは黒幕と実行犯が別人というケースも多いですが、黒幕からすれば実行犯はトカゲのしっぽ。彼らが処罰されたところで、自分は痛くもかゆくもありません。

 

この場合は、暴力であれ恐喝であれ、実行犯に命令した黒幕がいるかどうかを探ることがもっとも再発防止に効果的です。何せ、けしかけた本人が反省するなり怖くなってやめるなりしないと意味がありませんからね。

 

とはいえ、これに関しては加害者側の人権過保護という問題が一番大きい気もしますが……

 

 

 

さて、続けての2番目、表面問題に囚われず本質をどうにかする。

 

例えばバグを起こしたパソコンなんかがわかりやすいでしょうか。パソコンが何らかのウイルスに感染して一部のソフトが使えなくなった場合、どうにかソフトが使えるようにするだけではなかなか自体は収まりません。

 

この場合、まずはバグの原因となっているウイルスがどうにかならないことには、解決には至らないわけですね。

 

 

 

どちらにしても、本質や根幹を見抜いてそこをどうにかするのが早いという意味で一致します。

 

人間、どうしても目の前で起こった事ばかりに目を向けがちですが……それをどうにかしたい場合、「なぜそうなってしまったのか」を考えるとより解決への近道になるかもしれませんね。

 

 


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