三十六計:第十五計 調虎離山(ちょうこりざん)

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三十六計:第十五計 調虎離山(ちょうこりざん)

 

 

言葉の意味

 

 

虎を調って山を離れしむ

 

特に攻城戦において、万全な状態での敵と正面から戦うなど下策も下策。スポーツの試合ですらアウェーな環境はなかなか苦しいものがあるのに、ルール無用何でもありの戦争において相手のホームで戦うなど、それこそ危険です。

 

 

例えば人里に出没する虎を退治するとき、虎自身が地形も何もかもを知り尽くしている山まで自ら出向くのでは対処に苦労を強いられます。しかし、その虎がもし山を離れて人里にいる時を迎え撃つのであればどうでしょう。

 

あらかじめ罠を張ることもできますし、地の利は完全にこちらにあります。わざわざ山に入って虎を探すよりも、手っ取り早く少ない労力で虎を退治できます。

 

 

調虎離山とは、敵をそんな虎に見立てた言葉。言うなれば、「敵を得意分野や盤石の体制を敷いた船上から引き剥がしてしまおう」という意味合いの計略を意味します。

 

 

 

 

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要するに……

 

 

 

待天以困之 用人以誘之 往蹇来返

 

天を待ちて以って之を困しめ、人を用いて以って之を誘う。往けば蹇み来れば返る。

 

 

相手が有利な場所に閉じこもったり要塞を構えたりしていれば、それを直接攻撃するのは困難を極めます。

 

そんな時に一番いい手は、相手に有利な条件が消えてしまうのを待つこと。人を使って……つまり敵を上手く誘い出して逆にこちらが有利な状況に敵を引き込めば、相手の要害に直接攻撃を仕掛けるよりはるかに楽で効率的な戦い方ができるのです。

 

 

敵地深くに進めば多大な困難が待ち受けており、こちらに地の利がある場所では逆に安心して戦えます。

 

 

 

昔から相手に有利だと思わせて誘い出し、向こうから攻撃を仕掛けることで有利な状況から引き剥がす……という作戦は、攻城戦では基本に近い戦い方となっています。

 

そんな戦い方が基本戦法として存在するほどに、相手のペースに乗せられたまま敵の土俵で戦うのは危険な行動だったと言えるでしょう。

 

 

最悪、自分の有利な土台に誘い込むまでする必要はありません。ただ、相手の有利な状況で無理やり戦おうとしない。調虎離山は、そんな攻めの戦の鉄則に忠実な計略なのです。

 

 

 

例えば、「理数学者が小説家と自作小説の出来で勝負して戦いになりますか?」てな話だな。

 

 

相手に絶対的に得意な領域で勝負しても、勝てる確率はミクロ単位がいいところだろう。

 

なら、その分野は捨てて、相手の得意分野以外での勝負に持ち越す。勝ち負けの世界では、まず負けないために必要な心構えだわな


 

 

 

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現代での運用法

 

 

 

昔の戦争だけでなく、現代でもだいたい同じようなことが言えますね。相手との競合において、明らかに相手の方が上手の分野は捨てる。そうすることによってその相手とは敵対を避けるか、もし戦うことになっても相手の土俵で惨敗することは避けられます。

 

 

いくら強大な相手であっても、自信があったりしっかり活動していない分野においては素人も同然。極端な話、電化製品のメーカーである会社がアイスクリームの製造技術など、普通は持っているわけはないのです。

 

まあさすがに電機メーカーとアイス作りで勝負するなんで状況はまずあり得ませんが……例えばの話、伝統の味を意識するアイスメーカー(例:ハー〇ンダッツ)を相手に斬新なアイスのメニューで勝負をするみたいなことはできなくはありません。というか、実際にそれで窮地を切り抜けたアイスメーカーは存在します。

 

 

孫子にも「勝ち目のない戦いはしない」とありますが、調虎離山はそんな戦いを避けるための計略であり、戦略方針の立て方解説でもあります。

 

勝ち目がないなら、いっそ勝ち目がありそうな分野に引き込んで戦ってみる。特に何かの分野に新規参入するときは、こういうところに気を配ってライバルと戦えば少しは勝つ見込みが生まれるのです。

 

 


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