三十六計:第十三計 打草驚蛇(だそうきょうだ)

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三十六計:第十三計 打草驚蛇(だそうきょうだ)

 

 

言葉の意味

 

 

草を打ちて蛇を驚かす

 

 

日本語で言うところの、「藪をつついて蛇を出す」、短く言えば藪蛇ですね。

 

この藪蛇をそのまんまの意味で理解するか、あえて逆手に取るかは解釈が別れるところですが……だいたいの意味合いは以下の3つに集約されます。

 

 

1.状況がよくわからないなら、まずは偵察や小規模な攻撃で様子を見て、相手の反応を分析する

 

2.下手なアクションは相手に策を知られて予防策をとられる元。まさに藪蛇

 

3.見せしめの懲罰で警告する

 

 

後に続く言葉から、主に1が正しい解釈として用いられますが……まあ状況によっていろいろな手段が取れる奥の深い言葉でもあるというわけです。

 

 

 

 

 

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語源:唐のクソ役人

 

 

 

打草驚蛇の語源は、唐の時代の王魯(おうろ)なる汚職役人を市民がはじき出したという話に始まるとされています。

 

 

王魯の汚職行為に心底ウンザリしていた住民たちは、ついに抗議文書によって彼の排斥を計画。皆でこぞって、王魯……ではなく、なぜかその副官を弾劾しにかかります。

 

市民があえて副官を叩いた理由としては、王魯の汚職がグレーだったとか、王魯の報復が怖くて日和見したなど諸説ありますが……この市民の行動は見事に功を奏し、以後王魯はパッタリと汚職をやめてしまったのです。

 

 

後の王魯の述懐によると、「結局連中は草むらを叩いただけの話だが、草むらの中に住む蛇を驚かすには十分すぎる行動だった」とか何とか。

 

 

 

開き直ったか元々サイコパス気質か何かで罪悪感を覚えない相手なら効果はないが……基本的に悪事を働く奴ってのは周囲の批判や見る目に過敏なもんだ。

 

何気ない言葉や日和見程度のちょっとした行動にも過剰反応してボロを出すってのは、結構ある話なんだな、これが


 

 

 

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要するに……

 

 

疑以叩実 察而後動 復者 陰之媒也

 

疑わば以って実を叩き、察して後動く。復するは媒なり。

 

 

思いっきり1にあるような意味合いですね。敵情がわからなきゃ、偵察を繰り返してしっかり理解してから動く。戦いは基本的に先手必勝ですが、前情報も無しにひたすら動いたのでは勝つに勝てません。

 

そこで、敵の様子を探って万全の状態を作るため、偵察なり小規模な攻勢なり、とにかくアクションをかけて相手の様子を見て、断片的でもいいので情報を得ようというわけですね。

 

 

例えば小規模な軍勢に対して全軍で突撃を仕掛けてくるような相手なら……それがこちらを惑わす計略でもない限り、囮作戦が大きな効果を生むことでしょう。

 

このように、作戦を練り上げるためにあえて藪をつついてみるというのが、打草驚蛇の主な解釈になります。

 

 

 

ちなみに意味合い2に関しては言わずもがな。藪をつつけば蛇が出る。安易なアクションは相手を警戒させて、攻略を難しくしてしまいます。

 

 

 

3の意味合いは、完全に味方に対する戒めですね。

 

孫子兵法の著者である孫武は、宮中の女官を兵として扱うという無茶ぶりをされた時、実に面白い事をしてくれています。

 

 

 

孫子の戒め

 

 

そもそも女が戦場に出るなんてのは、本来あり得ない話。これはあくまで、王に頼まれて孫子兵法の実践(というか試験)をするときの話ですね。

 

当然、女官たちは戦争なんて出ませんし、兵でもありません。むしろ軍隊を見下している節もあり、どれだけ厳重注意しようが、指示を出しても馬鹿笑いするばかりで一切聞く耳を持ちませんでした。

 

 

何度何度と指示を出しても、女官たちが従おうとする様子は無し。しびれを切らした孫武は、ついに女官たちから選抜した隊長をその場で手打ちにしてしまったのです。

 

その後新たに隊長として指名したのは、特に態度の悪かった二人。

 

こんなことをされては、いよいよ笑ってばかりの女官たちも命令に従わざるを得ません。それからは人が変わったように粛然と命令に従い、これを見ていた王はいよいよ孫武の軍略を重用するようになったのでした。

 

 

どっちかっつーとかなり後に解説する「指桑罵槐」のほうがしっくりくる話だが……まあ、藪をつついて(懲罰)蛇を出す(警告に従わせる)という意味合いではこういうのもあるんだわな


 

 

 


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