三十六計:第十計 笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)

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三十六計:第十計 笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)

 

 

言葉の意味

 

笑いの裏に刀を蔵す

 

 

周りが敵だらけで油断のならない乱世、唐突に現れた気の良い仲間というのは、とてもありがたいものですよね。

 

笑裏蔵刀とは、この心理を利用します。

 

 

つまりフレンドリーに敵に接して、友好的だと勘違いさせた裏で、密かに出し抜く策略を練る。これが、笑裏蔵刀の言葉の意味です。

 

 

 

 

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語源・由来

 

 

 

この言葉の元ネタは、唐の宰相である李義府(りぎふ)という人物。

 

彼は非常に温厚かつ有能な人物で、人と話すときは笑顔を絶やさず、周囲も表立って悪口を言えないほどの好漢でした。

 

 

しかし、そんな李義府の本性は、悪辣で陰険。大身になるまではそんな本性を隠していたのですが、彼が宰相の位に就くと、その本性を表に出すようになります。

 

まず皇帝の威光を盾に、自分にとって都合の悪い面々をことごとく失脚させて権力を増強。さらに政権を確固たるものにすると、ついには専横を強めて賄賂を推奨するなど、好漢としての面影はどこにもなくなってしまったのでした。

 

そんな李義府の本性を見て、人々は言ったのです。「義府は笑中に刀有り」、と。

 

 

……もっとも、最後には皇室とも確執が起こり、そのまま保身をはかったものの最後は失脚という末路をたどりましたが。

 

 

 

 

 

要するに……

 

 

信而安之 陰而図之 備而後動 勿使有変

 

信にして之を安んじ、陰にして之を図る。備えて後に動き、変有らしむる事勿かれ。

 

 

表向きだけでも温厚に接する事で敵の油断を誘い出し、密かに裏で策を練る。当然、完璧に備えができるまでは、敵に怪しまれることがあってはありません。

 

表向き有効な関係を作り上げることで、相手は警戒心が薄れます。これによって、非常に安全な状態で動けるようになるのですね。

 

 

この笑裏蔵刀の計略の予兆は戦いの場では多く見られるようで、孫子兵法にも言及されています。

 

 

 

辭卑而益備者 進也 辭疆而進驅者 退也

 

辞卑くして備えを益すは、進むなり。辞疆くして進駆するは、退くなり。

 

 

つまり、何かを仕掛けようとしてくるときほど相手はへりくだり、逆に撤退したがっている時は高圧的な態度で恫喝、牽制すると。

 

 

戦争において作戦は大事な機密です。それがバレないように、多くの人は決まって目的と反対の態度をとってこちらをうまく騙そうとします。

 

戦争をする上で、笑裏蔵刀の策で敵を惑わすのは基本。毎回のように行われては、そのつど腹の探り合いになっているのです

 

 

 

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現代への活用法は?

 

 

 

さて、戦争中は仲良しなフリして相手を騙す作戦ですが……現代でこんなことをしてわざわざ人を貶めなければならないケースなど、ごく限られていますね。

 

 

じゃあ現在にどのように使うのかというと、いざという時のために、常に威張らず謙虚にいることという考え方ができるでしょう。

 

戦いだろうが平和な時期だろうが、わざわざ相手に対して威張り散らしたり進んで危害を加えようとしたのでは、いくらでも力を消耗していきます。それを防ぐために、笑裏蔵刀の応用が使えることになるでしょう。

 

 

やり方は元ネタの李義府と似たり寄ったりですね。地位を誇って下にいる人間をいじめて楽しんでいたのでは、いずれ被害者によってその悪行が周囲に知れ渡ります。

 

そうなってからでは言い訳もできないので、とりあえず余計な敵は作らないよう友好的に周囲と接する……というわけですね。

 

 

あとはくれぐれも、どれほど大身になったとしても油断しないこと。まんまと尻尾を出して落ちぶれる所まで李義府を真似たのでは、目も当てられません。

 

 

 

自分の成功を不必要に誇れば、妬みが生じる。成功をカサに他人を見下して侮蔑すれば、恨みが生じる。

 

嫉妬と怨嗟の声はシャレにならんぞ。デカい上に、賞味期限が存在しない。特に恨みは、落ちぶれてからが晴らす本番だろうさ。

 

 

今ある地位は永久不変のものでは絶対にない。この事を肝に銘じて、日々を生きたいよな


 

 


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