三十六計:第九計 隔岸観火(かくがんかんか)

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三十六計:第九計 隔岸観火(かくがんかんか)

 

言葉の意味

 

 

 

対岸の火事を観察する。

 

敵が混乱してしっちゃかめっちゃかになっている時は、あえてその状況を見守ってみるのも手。

 

あえて隙を見過ごすことで、そのボヤはさらに大きく、相手の手に負えないほどの大火事になるかもしれません。

 

 

隔岸観火とは「あえて傍観に徹し敵の自滅を待つ作戦」、転じてトラブルの際に手を貸すそぶりも見せず傍観することを指す言葉です。

 

 

 

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兵法としての隔岸観火

 

 

陽乖序乱 陰以待逆 暴戻恣睢 其勢自斃 順以動豫 豫順以動

 

陽乖れ序乱るれば、陰逆をもって待て。暴戻恣睢は、其の勢自ら斃れん。順をもって動くは豫、豫は順をもって動く。

 

 

相手の中で秩序が乱れて混乱し、そのまま対立が深まっていけば、特にこちらが何か手を下すこともなく勝手に自滅していく。

 

弱みに付け込んで一気に勝負を決めるのは大事ですが、こちらと相手の力量が拮抗している時には手を出すとかえって悪手になる事もあります。

 

 

内部での対立みたいなケースは特にそうで、仲間内で対立しいても、強大な敵が近くにいては内部抗争どころではありません。それどころか、まずは敵をなんとかしようとその場で結託する可能性すらあるのです。

 

 

趁火打劫では「敵がトラブルで隙を見せたら攻撃すべし」と言いましたが、今回の隔岸観火はあちらと違って互角の戦いにおける計略。

 

ちょっと隙をついてみたからといって、それが相手にとって深手にならなければ意味はありません。そこで、隙を突いても勝ち目があまり高くない時はあえてぼやが大きくなるまで待ってみるのも大事な作戦なのですね。

 

 

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実例:兄弟争いで仲良く全滅

 

 

おあつらえ向きの実例として、三国志の曹操(そうそう)が天下の覇者になるまでの過程に面白い話があります。

 

西暦200年、曹操は宿敵の袁紹(エンショウ)を撃破。袁紹はその2年後に病死しましたが、その力は未だ強大。袁紹の息子たちが兄弟間で後継ぎ争いを行ったものの、国力や兵の強さに衰えがほとんどなかったのです。

 

現に曹操は兄弟間の対立が激しくなりつつあるときに攻撃を加えましたが、その場限りで共闘した兄弟たちによって逆に追い散らされる始末。最強の敵が世を去ったとはいえ、まだまだ気の抜けない状態が続いていました。

 

 

そんな折、曹操軍の軍師は「あえてしばらく放っておきましょう」と進言。試しに曹操が袁兄弟を放置してみると、何と数年と経たぬうちに後継ぎ争いが本格化し、ついに全面的な武力衝突にまで発展。

 

そして袁紹の長男が形勢不利で曹操に和睦を申し入れたところ、ついに曹操軍は満を持して袁紹の旧領に進軍を開始。これまでが嘘のように袁紹軍の本拠を奪い取ることに成功し、数年後には長男含めた袁紹領の全土が曹操の手中に収まったのでした。

 

 

 

まあここまで極端でド派手なのはレアケースだが……だいたいの人は案外目の前しか見えてなかったりする。

 

例えば目の前にとんでもない強敵がいたのならば、どれほど仲の悪い相手だとしてもよほどのバカでなければ共闘するし、その強敵がいったんいなくなれば、緊張が解けてまたお互いの関係が悪化しはじめる。

 

 

なら、下手に危害を加えて危機感を持たせず、ゆるみきってボロが出るのを待つのも立派な戦術だわな


 

 

 


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