三十六計:第三十四計 苦肉計(くにくけい)

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三十六計:第三十四計 苦肉計(くにくけい)

 

 

言葉の意味

 

 

苦肉の計

 

 

これは日本でも、ある程度なじみのある言葉ではないでしょうか? 主に三国志演義で呉の武将・黄蓋(こうがい)が実行して絶望的な戦力差をひっくり返したという事例で知られていますね(といっても半分以上創作)。

 

 

簡単に言うなら、自分をあえて傷つけることで敵の油断を誘う策のことですね。

 

こちらは相手の心理にダイレクトに訴えかける作戦のため、意外と史実でもドハマりして難しい目標を達成した事例もそれなりに見受けられます。

 

 

まあ、相手が同情して若干引くレベルまで自分が傷つくこと前提の策なので、あまり嬉々として実行するのもアレな策ですが……ともあれ、使いどころと加減さえ間違わなければ有用なのは間違いありません。

 

 

 

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要するに……

 

 

人 不自害 受害必真 仮真真仮 間以得行

 

人、自ら害せず、害を受くれば真なり。真を仮とし仮を真とすれば、間以て行うを得ん。

 

 

そもそもまともな状況下で自傷行為を行う人はおらず、もしも味方に深手を負わされればそれは実際に何かあったと見ていいでしょう。

 

苦肉計は、そんな常識と心理を逆手にとって、自分から内部で何かあったかのように演じ、敵の油断を誘います

 

 

つまり、元来有り得ないような重臣の懲罰や内部の不和といったものを演出することで敵の目を欺き、あたかも本気で裏切ったり敵に味方したかのように思わせることで相手に上手く取り入る。この一連が苦肉計ですね。

 

 

当然ながら、バレてしまっては元も子もありませんし、敵に偽の降伏をした部下も生きてはいられないでしょう。やる以上は、不和や理不尽な仕打ちをあたかも本気でやっているかのような高い演技力や演出力が必要になります。

 

それこそ、生半可な傷や棒読みの演技では話になりません。身内を殺したり、自分の身体を欠損させたり……実際に苦肉計が決まった時の実例は、その過程でかなりエグい話も出てきます。

 

 

とにかく追い詰められたときの策のひとつなので、実行のための人的・精神的コストが馬鹿にならないことも考慮に入れなければなりませんね。

 

 

 

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実例:復讐の芽

 

 

 

『呉越春秋』という書物に、まさに苦肉計を用いた暗殺作戦についての実例が載っています。

 

苦肉計の話のキーパーソンになるのは、呉の国の国王・闔閭(こうりょ)。彼は呉の王になるにあたり、紆余曲折を経て呉の王となった人物を殺して王の地位を奪ったという後の懸念材料がありました。

 

しかも先代呉王の子である慶忌(けいき)は国外に逃亡。父を大義名分にして他国に援軍要請をしたり何か行動を起こされると非常に厄介な存在になりかねない、闔閭にとってもトップクラスに危険な存在だったのです。

 

 

そこで闔閭は慶忌を暗殺する実行犯を募りますが……ここで自らその役を買って出たのが、要離(ようり)という臣下でした。

 

要離は慶忌暗殺を実行するにあたって、なんと緊急逮捕という体裁で自ら冤罪を受け、右腕を切断。さらに妻子を架空の罪の連座という形で処刑まで追い込んだのです。

 

ここまで理不尽かつ悲惨な状況を演出した後、要離は闔閭から逃げるという形で国外に脱出。同じ呉のはみ出し者として慶忌に接近し、まんまと信用を得ることに成功しました。

 

かくして慶忌にいたく同情されて信頼を得た要離は、慶忌の元で参謀のひとりにまで出世。完全にお近づきになった後、気を見て暗殺に成功し、自らもその場で死ぬことで闔閭の懸念材料をひとつ消すことに成功したのでした。

 

 

 

正直、この辺の価値観は現代の日本とは大いに違うよな。俺もちょっと引いたのは内緒だ。

 

とはいえ、大きなことを奇策を使って成し遂げるには、これまた大きな犠牲も必要ってことかもな


 


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