三十六計:第三十一計 美人計(びじんけい)

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三十六計:第三十一計 美人計(びじんけい)

 

 

 

言葉の意味

 

 

美人の計

 

 

ストレート。もはやそうそう語ることも無し。

 

色仕掛け、美人局、スキャンダル。女性関係で嵌められて痛い目を見る男性というのは、いつの時代にも存在します。現代でもその手合にやられて結婚詐欺だとか美人局からの金銭強奪やらで問題になってますね。

 

 

当然、これは男女逆でも起こりうることですが……いずれにしても、色欲は人を惑わすのに最適ともいえる手段。それこそ相手の指揮官を魅惑して冷静さを奪い、破滅に至る選択を自ら選ばせてしまう事すらできます。

 

美人計とは、こういう色欲を使ったゲスな匂いがプンプンする策略を指します。

 

 

 

 

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要するに……

 

 

 

兵強者 攻其将 将智者 伐其情 将弱兵頽 其勢自萎

 

兵強き者は其の将を攻む。将智なる者は、其の情を伐つ。将弱く兵頽るれば、其の勢自ずと萎まん。

 

 

 

兵が屈強ならば、兵でなくそれを率いる将軍に狙いを絞るべし。また将軍が知将と言える力量の持ち主ならば、今度は彼の感情に訴えるのはよい戦法です。

 

将軍が骨抜きの腰砕けになれば、当然率いられる兵の士気は激減し、自ずと弱体化していくのです

 

 

戦いは意外と気力と勢いによって成り立つものであり、一気呵成に攻めてくる相手を正面から迎え撃つのは非常に難しいものだとされています。例えば街中で刃物を振り回す男に堂々と喧嘩を売れる相手がいないわけで、戦争での勢いの差もこれと同じことが言えるのです。

 

とすれば、楽に勝つには相手の気力を損なうのが最善の策。こちらが目に見えて劣勢の場合、特に気力を削ぐのが最重要項目と言ってもよいでしょう。その方法のひとつが、美女による色仕掛けや財宝による目くらましというわけですね。

 

 

ただし、「情に訴える」ような策が通用するのは、相手と交渉のテーブルにつけることが大前提。古代の戦いにおいては降伏の献上品に財宝と美女があるのは鉄板で、このせいで勝利した側がまさかの滅亡という末路を迎えた例も少なくありません。

 

 

 

まあ現代において組織ぐるみで枕営業というのはどうしようもないアレな感じですが……色欲はともかく他の欲望を刺激して相手から冷静な判断力を奪うのはひとつの戦略として有効と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

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使用例:臥薪嘗胆

 

 

 

法家思想の金字塔ともいえる『韓非子』という書物には、この美人系の使用例はなかなか豊富に存在しているのですが……その中でも特に有名というかなじみ深いのは、越王勾践の「臥薪嘗胆」という故事成語ではないでしょうか。

 

 

越の国は隣国の呉と仲が悪く、戦争の末にとうとう越は滅亡同然という状態に追い込まれてしまいました。

 

この時に越の王だった勾践はやむを得ず呉と降伏。召使としてしばらく呉に仕えるという屈辱的な条件で呉の属国となりましたが、召使の任期を終えて祖国に戻った勾践はあきらめませんでした。

 

 

この時に勾践は屈辱を忘れないよう、毎日苦い肝を舐めては呉への復讐を誓っていましたが……当然、越の国はただチャンスを待ち続けたわけではなく、軍備を整える傍らでもう一つ策を凝らしていました。

 

この時に呉に対して仕掛けた策のひとつが、今回挙げた美人計です。越は自国内でも絶世の美女と言われる女性を呉の王・夫差に献上しており、夫差はこの女性を寵愛。少なからず滅亡の一因となったのです。

 

 

 

もっとも、それと同時に越は呉の宰相を賄賂で買収しており、宰相にちょくちょく余計な口出しをさせたのも滅亡の大きな要因になります。いずれにしても、欲望を前に目がかすんだことで、圧倒的有利な状況が足元から崩れた実例のひとつと言ってよいでしょう。


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