三十六計 第六計:声東撃西(せいとうげきせい)
言葉の意味
東に声して西を撃つ
「東から攻めてやる」とブラフをかけといて、西から仕掛けてぶん殴る……要するに陽動作戦の意味ですね。
あまりに典型的かつ効果の高さがわかりやすいため、もはや何を語るべきか悩みますが……敵の隙を意図的に作り出し、実際に攻撃を仕掛けるまでの一連の流れがこの計略です。
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要するに……
敵志乱萃 不虞 坤下兌上之象 利其不自主而取之
敵志乱萃して慮らざるは、坤下兌上の象。その自ら主どらざるを利して之を取る。
何やら「周易」という当時の占術の用語が出てきていますが……要するに「相手の統制や判断に狂いが生じた時に攻撃しなさい」という意味ですね。
どれほどの財を投資して一ヶ所の守りをガチガチに固めても、他のお留守な箇所を攻められては一巻の終わりです。
声東撃西の計略は、つまり陽動で相手の指揮や判断を狂わせ、破綻したり大きな隙をさらしたところを叩くという一連の流れを説いた策になります。
一ヶ所の防備を固めては他がお留守になる。複数個所を同時に守ればそれだけ一ヶ所あたりの防備は薄くなる。
考えてみれば至極当然のことですが、この必然をうまく扱える人は、戦いの場では強いです。
っても、現代社会には使いづらいよなあ。
一応、力を入れたい本命と違う場所に注力しますと公言する裏で本命の活動に力を入れる手段もあるが……従業員のモチベーションと機密の両方を保持しなきゃならん。
まあ、陽動そのものは人との権力抗争とかに組み込めなくはないかもしれんな
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使用例:官渡前哨戦
200年に中国で行われた官渡(かんと)の戦いなんかは、特に声東撃西の策をうまく使った一例なのではないでしょうか。
三国志の覇者・曹操(そうそう)がライバルの袁紹(えんしょう)を下した戦いですが……この時の曹操軍はとにかく不利。史書にある兵力比10:1はおおよそ嘘っぱちでしょうが、それでも3:1くらいの戦力差があっても不思議はありませんでした。
そんな戦いの前哨戦。袁紹軍の先鋒部隊が曹操軍の前線基地の白馬(はくば)を攻撃し、白馬が陥落の危機に陥ったのです。
曹操はすぐに白馬の救援に駆けつけようとしますが、ここで、参謀の荀攸(じゅんゆう)という人物が待ったをかけます。
「それよりも、白馬より西にある延津(えんしん)を経由し、袁紹の領土を脅かしましょう。真正面から救援しては危険です」
曹操は荀攸の進言通り、まずは別動隊を編成して延津方面から袁紹領を攻撃。すると袁紹軍の先鋒部隊は軍を分断し、延津方面からの攻撃に備えるように展開しました。
これを見た曹操は、救援部隊を白馬に向けて手薄になった袁紹軍に猛攻をかけ、先鋒の総大将を撃破。白馬の救援は成功したのです。
声東撃西は平時ではなかなか使いづらいですが……とにかく抗争の場ではよく使われ、汎用性にも富んだ計略です。ここまできれいに決まる例はそこまで多くありませんが……戦争を見てみると古今東西問わずいろんな場面で使われています。
ところでおっさん気になるんだが……声東撃西の検索候補の中に「ガールズ&パンツァー」ってアニメ作品の名前があんのな。
この作品自体は有名だし名前は聞いたことがあるんだが、ガルパンの名前が出た時ちょっと固まっちまったぞ。
というか何? 作品内で声東撃西使われたの?