三十六計 第一計:瞞天過海(まんてんかかい)

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瞞天過海(まんてんかかい)

 

言葉の意味

 

天を瞞(あざむ)きて海を過(わた)る

 

 

要するに、相手を油断させてその隙に目的を達成する……という意味ですね。

 

 

 

 

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語源・由来

 

 

この言葉の出展は、『永楽大典』という明時代の書物に書かれた故事成語が語源となっています。

 

 

唐の二代目皇帝・太宗(たいそう)の時代の事。高句麗(こうくり:朝鮮半島の国家)に遠征しようと軍事行動を起こした唐王朝でしたが、なんと太宗は海を怖がって船に乗るのを拒否してしまいました。

 

当時の皇帝は神様にも等しいとされ、無理やり船に乗せるなど言語道断。周囲は、完全に困り果ててしまいました。

 

 

そこで、張士貴(チョウシキ)なる将軍は、一計を案じます。なんと、船に土盛りして小さな丘に見立て、その上に屋敷を建てたのです。

 

太宗はその屋敷に入って安心している隙に、盛った土をすべて取り除き、無事に屋敷の乗った船は出航。ついに太宗は気づかず海を渡り、いつの間にか高句麗に到着していたのでした。

 

 

 

 

要するに……

 

備周則意怠 常見則不疑

 

備え周かば則ち意怠り、常に見れば則ち怠らず

 

防備が万全ならばそれだけ気が緩み、見慣れてしまえばその存在ややってることに何の疑問も持たなくなる。

 

まあ出展元は敵でなく上司を嵌めたわけですが……どちらにおいても、相手が「いつも通り」だとか「余裕で対処できる」と思った事に対しては、とことん警戒心がゆるくなります

 

 

この心理を使って相手を誘導してしまえば、案外難航していた物事もあっさり片が付くかもしれませんね。

 

 

 

 

思い込みの力ってのは恐ろしい。

 

準備万端であれば気が大きくなり、日常風景を前にすれば「いつも通り無事にすむ」と思い込んじまう。

 

 

思わぬ事故を引き起こしたり、急なトラブルに対応しきれなくて撃沈したり……当たり前や準備万端の思い込みがもたらす危険は、案外身近にサンプルが転がってるぜ


 

 

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引用:太史慈の奇策

 

 

 

三国志の序盤である、後漢末の話。太史慈(たいしじ)という勇将が、この思い込みを利用した策を講じています。

 

 

というのも、母がお世話になったという群雄の孔融(こうゆう)なる人物を救援に行った太史慈でしたが、なんとこの時の彼は身ひとつ。並外れた武勇を持つと言えども大局的にはたかが知れており、あっという間に孔融軍は完全包囲され、周囲に援軍を求めようにも突破すら困難な苦境に立たされたのです。

 

 

そこで太史慈がとった方法は、得意の弓の訓練を偽装するという策。わずか2騎のお供を連れては敵軍の前に姿を現し、突然訓練を始めてはそのまま引き返すという珍行動の繰り返しでした。

 

 

最初は「何事か!?」と思いっきり警戒していた敵軍でしたが、数日繰り返すうちに、太史慈の訓練はすっかり当たり前の日常に。敵は臨戦態勢を整えもせず、ついに寝そべったまま「いつものことか」と太史慈を無視するようになったのです。

 

 

この有り様を見た太史慈は、突如として馬に鞭をくれて疾走。敵軍が気付いたときには、太史慈はすでに囲みの外にいました。

 

かくして、太史慈は隣接した地域に駆け込んで救援を要請。兵を借り受けて敵軍を散々に打ち破ったのです。

 

 

周囲の目には日課としか映らない行動の中に、「まさか」と思う秘策を忍ばせる。これが、瞞天過海の計の真髄なのです。

 

 

 


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