三十六計:第二十六計 指桑罵槐(しそうばかい)

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三十六計:第二十六計 指桑罵槐(しそうばかい)

 

 

言葉の意味

 

 

桑を指して槐を罵る

 

 

槐(えんじゅ)の木の悪口を言って、戒めるか追い詰めるかをしたい。こんな時には槐を直接なじるのもひとつの手ですが……警告や罵倒を効果的に相手に伝えるテクニックとして、別のもの(桑)を散々に罵倒するという方法がります。

 

例えば、職務怠慢が目立つ部下に警告を発するときに、あえてその部下が所属するチームのリーダーに対して怠慢を責める……みたいなやつですね。

 

 

一見何の意味もない謎の行動に見えますが、「もしかして自分に言ってるのか?」という間接的な不安は時として直接言うより効果があります。要は、そんな間接的な注意による引き締め効果をうまく使えというわけですね。

 

 

簡単に言えば見せしめですね。

 

 

 

 

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要するに……

 

 

大凌小者 警以誘之 剛中而応 行険而順

 

大、小を凌ぐは、警めて以て之を誘う。剛中に応じて、険を行いて順。

 

 

この人本当周易好きやな

 

 

力量に明確な差があれば、こちらの交渉は大きく有利に傾きます。例えば恫喝や脅迫などなど……普通は侮蔑であるとして逆に戦禍になりかねない手段でも、逆らえないという事実があれば相手は逆らえません。

 

だからこそ、「見ているぞ」という警告も込めて厳しい態度で臨めば臨むほど、相手は素直に要求に従うしかなくなるのです。

 

とはいえ、ただ単に強気で臨むだけでは余計な敵を作りかねませんし、相手が感情論でそのまま敵対、余計な手間がかかってしまう可能性すらあります。

 

 

そこで、あえて見せしめを用意することで冷静に考えるクッションを相手に用意し、同時に「逆らったらこうなるのだ」という脅迫を行うというやり方が効果的とされるわけですね。

 

自分にも心当たりがある罪で近隣の他人が何かしら思い罰を受けることになったら……もはやその人は気が気でなくなるでしょう。「いつかは自分もやられる」という恐怖から保身のために黙って従ったり、反抗的な動きをとる事を考えつきづらくなるのです。

 

 

こうして相手を力づくで従えてしまう事で、自分にとって優位な状況を無理矢理作り出すことができます。

 

 

 

 

あるいはスケープゴート?

 

 

 

ちょっと変わったやり方として、本当の敵を引っ張り出すための生贄……つまりスケープゴートという運用方法もあるかもしれません。

 

要するに、まったく関係ない人や物を攻撃して本当の敵の油断を誘い、標的がのこのこと出てきたところで攻撃目標を転換するというやり口ですね。

 

 

随分前に江蘇省で起きた反日デモなんかがこれにあたりますね。

 

住民たちは最初、反日デモ隊として現地に集結、日本企業が攻撃の対象として抗議に遭いました。これに油断した政府はデモを完全に黙認していましたが……その翌日には反日のデモ隊は中国政府への反発デモに豹変。数十人の負傷者を出す事態に発展したのです。

 

 

スケープゴートにされた我々としては正直たまったものではありませんが……まあ自分たちの目的を達成するためにこういう方法もあるという事ですね。

 

 

 

要するに、使い道としては陽動だな。馬鹿正直に目標を追っかけても、ライバルや敵は簡単に備えを完成させてしまう。

 

そこで、微妙に関係あるけど接点が極めて微妙な目的を設定し、それを達成することでライバルを出し抜くってやり方だ。ま、兵法らしいやり方だわな


 

 

 

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実用例:秦の天下統一

 

 

 

戦国時代の勝者である秦が拮抗の中で頭一つ抜ける手掛かりになった策が、実用例として面白いでしょうか。

 

 

秦は他国より頭一つ抜けて国力を増強、最強勢力に成り上がることに成功しましたが……それに対して周辺諸国は連合軍を結成。秦は他国に攻め入ることができず、戦況は拮抗してしまいました。

 

秦も負けじとそれぞれの国と個別に同盟を結び機を見極めようとしますが、それでも決定打が打てずにいたのです。

 

 

そこで、宰相である李斯(りし)は、手始めに弱小国である韓を滅ぼすことを提案。弱小国を見せしめにすることで、各国を恐怖させて均衡を崩そうとしました。

 

結論だけを言うと、この策は大当たり。些細な理由で離反行為を責められた韓はまたたく間に秦に滅ぼされ、これに恐怖した他国は十年足らずのうちに各個撃破されていったのです。

 

 


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