孫子:風林火山の意味と現代への活用法!
疾如風 徐如林 侵掠如火 不動如山
其の疾きこと風の如く、静かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。
とまあ、孫子の中で特に日本で非常に知名度の高い一文が、風林火山というものです。
これは戦国時代後期の甲斐の英雄・武田信玄が旗印にまでしたことで、昨今でも良く知られていますね。
実はこの言葉は孫子の軍争篇にある言葉で、、孫子兵法に感銘を受けた武田信玄が使っていた言葉ですね。
実はこの言葉にはさらに続きがあるのですが……今回はその続きの文も含めて記述していこうと思います。
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1・疾きこと風の如し
まずは風林火山の最初のフレーズ、風について。
其の疾きこと風の如く……つまり、素早く動けば動くだけ、戦いに有利になるという意味合いですね。
有利な陣地の確保、迎撃態勢への移行、敵の撹乱……とにかく動きさえ速ければ優位を取れるケースは非常に多く、先手を取った分慌てることなく敵を観察できます。
動くときは迅速に! これひとつを徹底するだけで、特に人との争いごとでは有利なポジションを獲得できるのです。
これは現代でも同じようなことが言えますね。ビジネスにおいては先に動いた側が市場を確保できますし、相手の動きを見てから行動するにも、まず基本となる土台を確保できます。
それ以外のケースでも、だいたい先手を取って動いた側が有利に働きます。対抗馬よりも先に動いてしまう事で準備も万端に整いますし、相手に対して圧倒的なアドバンテージを確保したうえで戦いを挑むことができるのです。
ちとズレた解釈をすれば、「何かをやりたいと思ったときは、とりあえず動いてみる」ってのも有利につながりやすいな。
当然、考えなしに動くだけが正解じゃあない。例えば前準備をその場で始めたり、やりたいことに向けて何をすべきか考えて計画を立ててみたり……すぐに行動に移さないにしても、やれる事は結構ある。
ま、アレだ。思い立ったが吉日ってやつだな。
2・静かなること林の如し
静かなること林の如く……林のように姿を隠し、敵に位置を悟らせない。
戦争は情報が命です。敵の位置、作戦、目標や目的。それらが見えてこなければ、何に対してどのように備えるべきかを考えるのは困難を極めます。
そこで戦争においては、敵からはこちらがわからないようにすることで、相手に十分な備えをさせないようにするという戦い方が非常に効果的。
これは近年の戦争にも言えることで、敵がそういった隠密行動を行うのを防ぐために、探知レーダーのようなものも作られたりもしたわけですね。
ライバルとの競争にも、やはり同じことが言えるのではないでしょうか。向こうがこちらを意識している場合、必ずこちらの動きを観察してそれに対抗するはずです。
何をしているのかわからないというのは、そういった対抗策を編み出せないという意味にもつながるのです。
3・侵掠すること火の如し
侵掠すること火の如く……つまり攻撃は燃え盛る炎のように行うべし。
攻撃とは、敵を打ち破るために行うものです。半端な攻撃で跳ね返されるようでは、いい攻撃方法とは言えません。
攻める時は思い切って勢いよく、それこそ崖から谷底へ落ちるかのように。怒涛の勢いは孫子兵法における戦争の必勝パターンです。
だからこそ、攻撃は好機に、もはやなりふり構わないほど思い切って、とことん突き抜けるつもりで行う。これが、風林火山の「火」が示す意味なのです。
孫子兵法における戦いは、とにかく勢いだ。謀略や陽動なんかで相手の隙を作り、ここぞという時に勢い任せに突き進むことで勝利を得られる。
ま、何かしらやる上でも同じようなことが言えるな。
大事な局面で、しっかり準備をして「さて今こそチャンスだ!」って時に不安になって勢いを失ったんじゃ、大事な作業に手を付けるのは難しくなる
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4・動かざること山の如し
動かざること山の如く……山のようにどっしりと構えて、落ち着き払って動揺しない。
何かの計略を考えて実行するのは、敵だって同じこと。相手の作戦に不安を覚えたり慌てたりして隙を作れば、敵は必ずそこに付け入ります。
そびえ立つ山のようにどっしりと構え、隙を作らないこと。これが、相手の作戦や不意打ちへの究極の対抗手段です。
隙が無いよりある方を付け狙おうとするのは、古今東西変わらない人の性質です。戦いにおける敵だけでなく、詐欺師やモンスタークレーマー、とにかく他人を侮蔑してプライドを保ちたい人などなど……いわゆる人間のクズと言われるような輩は、付け込めそうな相手を常に探しています。
こういった連中は、やはり岩山のようにどっしりと構えて鎮座しているような人間にはなかなか手を出さないものです。
なぜなら騙しやストレス発散なんかが連中の目的なので、隙が無ければ何も収穫がないどころかマイナスにしかならない可能性もありますからね。
で、風林火山の続きは?
さて、お待たせしました。風林火山の続きの文章についての解説です。
まあ続きというか省かれたフレーズになりますが……実際の風林火山は、以下の言葉でまとめて一文としています。
其疾如風 其徐如林
侵掠如火 難知如陰
不動如山 動如雷震
其の疾きこと風の如く、其の静かなること林の如く
侵掠すること火の如く、知り難きこと陰の如く
動かざること山の如く、動くこと雷の振るうが如し
というわけで、風林火山の省かれた言葉は、陰と雷。いずれも風林火山のいずれかと意味がかぶってくるので、おそらくややこしくならないように省かれたんでしょうね。
5.知り難きこと陰の如し
もう似通ったようなものですが、一応解説。
知り難きこと陰の如く……つまりは林と近い意味ですね。
一応ニュアンスとしては、林が現在位置や陣容といった目に見える情報、陰は機密や作戦などの目に見えないもの……くらいの違いでしょうか。
こちらも現代では林と同じような使い方ですね。やり方がバレなきゃ相手はどうしようもない。だから知られたくない秘密はもれないように細心の注意を払いましょう。
6・動くこと雷の振るうが如し
最後の一文は「動くこと雷霆の如し」ともされ、歴史ゲームの大御所であるコーエーテクモゲームスさんではこちらが採用されているようですね。ちなみに読みは「らいてい」です。そのせいで雷帝という誤字がGoogle変換では多いようで……
意味としては、「激しく降り注ぐ雷のように激しく動く」。風のごとく素早い動きでの撹乱と、火のような怒涛の攻めの合わせ技みたいな意味合いですかね。
激しく動くことで相手を撹乱し、また疾風怒濤の勢いでの進軍で相手を恐怖させることもできる、と。
何事もそうですが、「ここぞ」というチャンスには素早く動いたほうが上手くいく可能性は大きくはね上がります。いざという時に雷のごとく動けるよう、下ごしらえもしっかりとしておきたいですね。
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まとめ
さて、今回はこんな感じで風林火山、そして陰と雷の解説をさせていただきました。
風のように速く動いて、林のように静かに行動して敵に知られず、攻めるとなれば火のような勢いで、また作戦は陰のように知られることなく、山のようにどっしり構えて隙を作らず、敵に隙ができたら雷のように一気に動く。
おおよそ、風林火山を全部まとめるとこういう意味合いになりますね。
戦いは騙し合いの世界で、利害と合理を基準にし、変幻自在の動きで敵を惑わすもの。風林火山は、そんな孫子の思想を端的に表した一文なのですね。
実際にこの一文を拝借引用した武田信玄も、文字通りの風林火山に即した戦い方をして、当時はどうしようもなく不毛だった甲州を本拠に領しながらもこれだけの知名度を誇る人物に成り上がったのです。
まあ現代にそれがどこまで引用できるかは解釈次第ですが……今回は私なりに解釈して活用法を考えさせていただきました。
風林火山をうまく引用して自分の力にするかどうかは、あなた次第。せっかくなので、選択肢のひとつにくらいは入れておきたいところですね。